第1話の春田にとっての牧君とは
・たまたま合コンで一緒になった、再び会うこともないだろう本社のエリートで
・異動してきて、職場の後輩になった人で
・ルームメイトになってみたら、家事万能の出来るやつ
でした
あの出来事までは
第2話で春田は、相談を持ちかけた武川さんに「もともと友達なんだろ?」と言われ、「そう…ですね、ま、友達、ですね」と答えます
そのことで、立場としての後輩、役割としてのルームメイトではないプライベートな関係が自分と牧君にはあると、春田は気づくことになるのです
もし、「友達」という言葉がなかったら、春田は公園で何と言っても牧君を引き止めたのでしょう
「一緒にいて楽しい、失いたくない」と言っても、「後輩」や「ルームメイト」なら、それは「立場」「役割」でしかありません
「友達」という言葉は牧君を傷つけたけれど、それ以外の言葉だったら、翌日(と思う)牧君は春田家に戻っては来なかったのではないかなぁと思います
第5話では、春田は武川さんに「牧から手を引いてくれ」と言われます
春田は「武川さんがよりを戻したいから俺が手を引く。それはなんか嫌だ。へ?なんで嫌?なんで?」と、自問自答しますが、武川さんの言葉で大切だったのは
「俺があいつじゃないとダメなんだよ」「俺があいつがいないとダメなの」
だったんじゃないかなぁ
春田が「俺が牧じゃないとダメなんだ」に気がつくには、これから1年の時間が必要になるのだけれど、同じく牧君を想う人間として、っていうか人を恋する人として、武川さんの言葉は、その自覚の曖昧な春田には必要なものだったような気がします
とはいえ、「友達」という言葉が、あの時の春田の牧君への気持ちの全てだったのでしょうか
本当は「友達」の言葉から取りこぼされたものがあったのだろうと思います
春田は牧君とちずちゃんそれぞれに「俺とお前の仲だろう」と言っています
牧君は「友達」、ちずちゃんは「幼馴染み」なのだろうけれど、それだけでは言い足りない何かがあるから、「“俺”と“お前”の“仲”」なのではないかなぁ
「俺とお前の仲って?」と問われたら、春田は自問自答するのでしょう、「友達?友達だよな、でも、友達ぃ?」って
「おっさんずラブ」のセリフはとてもシンプルでストレート
シンプルでストレートな言葉を使うことで、言葉に表しきれないたくさんの溢れるもの、掬いきれないものを生んで、それらを言葉以外の全てに託しているんだなぁと思いました
それが脚本というものです、と言われれば、そうなのかぁと思うけれど
あ、武川さんって牧君と別れたことを「過ち」と悟り、「俺があいつじゃないとダメ」の結論を得るまでに、4年の月日と、春田というライバルを必要としたのねぇ
うっわ、切ないなぁ…
部長10年、主任4年、自分を偽り続けた時の長さよなぁ