「おっさんずラブ シナリオブック」
第2話の公園での牧君の春田へのキスが“許し”だと読んで、驚きとともに納得がいきました
「何にも見えていないんですね」から、おでこにキス、そして「ずるいですよ」までの牧君の心の軌跡が目に見えるようで、すごい!としか言いようがなく
春田のわんだほうでの牧君への暴言は、男性を好きな男性への偏見と聞こえます
けれど、公園で一番最初に春田が口にしたのは牧君への謝罪で、春田の暴言は偏見や悪意、嫌悪ではなくて、無知だったとわかります
「何にも見えていないんですね」は、春田の拒絶や暴言が自分への嫌悪ではないということを理解した、安堵と脱力の混じった言葉のように感じました
最初は「(春田と牧君の間の恋愛という関係性において)人(僕)の気持ちが見えていない」という意味かと思っていたのですが、そうではなくて、もっと広義に「人の恋愛感情というものが見えていない」ということだったのかなぁと今は思います
「可能性がないなら優しくしないでください」と立ち去ろうとする牧君は、「悪いところがあったら直すから」「友達として」と春田に引き止められます
この時、牧君は「ああ、この人は“見えていない”んじゃなくて、恋そのものを知らないんだ」と気づいたのではないかと思います
これまでは「友達として」というあまりに無神経な言葉に傷ついた涙だと思っていたのですが、もっと深い絶望があったのかなぁと
恋を知らない人を好きになって、対等でいられるわけがない
「ずるいですよ」は牧君の敗北宣言だったのだなぁと思います
だから、牧君はその足で春田家に帰ったのでしょう
牧君が「春田はそもそも恋を知らない」と知り、そうなんだと許し、その春田さんを好きだと自覚して好きでい続けたのだと考えた時、「ちずさんと幸せになってください」の台詞も少し印象が変わりました
「やっぱり結局は女性と普通の恋愛をするのが春田さんの幸せだ」ということではなくて、「このまま、自然と春田さんはちずさんに恋をするようになるのだろうなぁ」と、春田の中に恋の兆しを見たのではないかなぁと思います
そう思うと、廊下での武川さんとの会話の時の牧君の悟ったような静けさも理解できるし、ちずちゃんに立ち退きの件解決の報告をする春田の様子を見つめる牧君の表情にも、これまでと違うものが見えるような気がします
既に、春田を許している牧君としては、そうであれば身を引く、出て行くという結論は当然というか、予想していた、覚悟していたことだったのではないでしょうか(間近で見ているのも辛いでしょうし)
けれど、春田に引きとめられて、“許す”なんていう偽りを捨てて「付き合ってください!」と春田に迫ります
ここでの二人は、もう対等ですよね
ちずちゃんが言うように、春田は成長していたのです
第5話以降の牧君は、それまでと比べて少しわがままで、春田を試すような様子がしばしば見えて、それは不安からかと思っていたのですが、それだけではなかったのかなぁと思います
“許し”という視点を持っていなかった時は、ここまでの二人の関係を「“普通”の春田と、その春田に片思いをしている牧君」と考えていました
なので、お付き合いするということになっても、牧君には不安が強くあったでしょうし、それが牧君の行動に出ていたのだと思っていたのです
けれども、牧君に“許し”という気持ちがあったのだったら、それだけではない差が二人の間にはあったと思います
牧君にすれば、春田は全く戦うすべのない相手であり、決して責めてはいけない相手だったはずで、牧君は春田のはるか上にもいるし、同時にはるか下にもいたのだと思います
けれども、「付き合ってください」「はい」で二人は対等になります
第5話以降の二人の喧嘩やすれ違いは、ごく当たり前の恋人同士の喧嘩であり、すれ違いであり、そうして歩み寄り、成長する二人は、ごく当たり前の恋人同士でした
若干、牧君の無茶振りはありましたが、春田はよく応えて、とてもいいカップルでしたよねぇ
あ、長くなっちゃった
牧君の“許し”と“それを捨てたあと”の、お話でした
シナリオブックはまだ第4話までしか読んでいないのですが、徳尾さんのあとがきだけでも、かなり衝撃を受けました
続きが楽しみだなぁ〜
あと、DVD、届きました!っていうお話は、明日