「神と共に 第1章:罪と罰」

6/5にSNSに書いたものですが、第2章の感想もブログに書き残したいので、第1章も移すことにしました

 

「神と共に 第1章 罪と罰」ネタバレ感想

ー 人は死ぬと、閻魔大王に生前の罪を裁かれ、極楽行きか地獄行きが決められる ー
「まんが日本昔ばなし」でお馴染みの伝承が、VFX技術でテーマパークを巡るかのように映像化された「冥界ファンタジー」
生まれ変わり(完全勝訴)を賭けて、49日間に〈殺人〉〈怠惰〉〈嘘〉〈不正〉〈背徳〉〈暴力〉〈天倫〉7つの地獄で弁論を争う「冥界リーガルドラマ」
有罪か無罪か、地獄で明らかになる過去、残される謎、そこには思いがけない家族の秘密が…という「冥界ヒューマンミステリー」

と言えば言えるのですが、観て愕然の超傑作です

亡者となった消防士ジャホンの元に、三人の冥界の死者、弁護を勤めるカンニムとドクチュン、警護担当ヘウォンメクが現れます
人のために自らの命を投げ打ったジャホンは「貴人」と認定され、裁判は楽勝だと思われたのですが、裁判が始まって早々、彼の親族が命を落とし、下界で怨霊となっているという知らせがもたらされます
怨霊の出現は冥界にも影響を及ぼし、裁判の行く先には暗雲が立ち込めて…

物語は、49日間で七つの地獄裁判を勝ち抜くという時間を軸に、ジャホンが亡くなるまでの15年間をどう生きたかという過去、怨霊となったジャホンの弟スホンが何故殺されたのかという現在が、布を縫い進める針と糸のように立ち現れます
「時間」は、この作品のテーマの一つではないかと感じました
ジャホンの罪を問われた15年は、後半明らかになるのですが、ジャホンの母の苦しみの15年でもあるのです
最後の裁判の場で閻魔大王は「母親の苦痛の15年を思え」「15年もの時間が与えられていたのに何故許しを乞わなかったのか」とジャホンの罪を質します
別の場面で、生前の記憶のない冥界の警護人ヘウォンメクは「千年なんかあっという間」と言います
生きているジャホンにとって生は有限、時間も有限ですが、生きていないヘウォンメクにとって時間はないものに等しいのです
閻魔大王は先の裁判の場で「死して生前の願いを叶える人間はいるが、何故、生きている間に行わないのか」とも問います
生が有限だと気付かずに死んだ亡者は、死して後の49日というタイムリミットに時間は限りあるものだったと知るのでしょう

閻魔大王はその裁きの場で「生きている間に自らの罪を悔いることのできる人間はごくわずか、その中のまたごくわずかの人間がそれを詫びることができ、そのうちのさらにわずかな人間が許しを得ることができる」と語ります
地獄とは、生前自らの罪に気づくこともできず、詫びることもできず、許されることもなかった人間に与えられた悔悟の機会と場なのかもしれません
閻魔大王は「すでに人間に許された人間を地獄が裁くことはない」とも言います
地獄とは、人間のためにあるものなのでしょうか

こう言うとたいそう物分かりのいい王様のように聞こえる閻魔大王ですが、ジャホンだけでなくスホン、母親のために冥界のルールを破って下界に干渉するカンニムと度々衝突します
この二人の衝突は「サラリーマンドラマ」を彷彿とさせる面白さがありました
先に書いたように冥界は人間のために存在しているのですが、物語の序盤では裁判で亡者を有罪にすると言う仕事が先行して、弁護人と対立する餓鬼製造ブラック企業のように見えます
自分の不利益を顧みずルールを破っても亡者の弁護をするカンニムは、言うなれば有能だけれどはみ出しもののサラリーマン、閻魔大王はカンニムの独断専行を苦々しく思っている社長でしょうか
ラスボスのように思われた閻魔大王ですが、最後の裁判ではカンニムの思いもよらない真実を明らかにし、ジャホンの罪の本質を突きつけます
けれど、それも、二人の認識とは次元の違う真実でひっくり返されるのですが

「美味しんぼ」の山岡士郎と海原雄山が「おもてなし料理」を競っていると想像してください
海原雄山の提供する料理を山岡士郎が「あんたは料理人の気持ちがわかっていない!」と糾弾したところ、海原雄山が「お前は、この料理を口にする人のことを考えたことがあるのか」と質します
山岡士郎がぐうの音も出ないでいるところに、その料理の材料の生産者が現れ、食物を作ると言うことの愛を語り、料理対決そのものが一蹴される…ような感じといえばいいでしょうか
何れにしても、閻魔大王は思った以上に器の大きい人物のようです

閻魔大王の話ばかりしてしまいました
今回の物語では、弁護を勤めるカンニムとドクチュン、警護担当ヘウォンメクの三人はキャラクターの説明と、各々の抱える秘密、謎の示唆で終わっていますが、それでもとても魅力的です
この三人の軽やかなやりとりに洗練された演出を感じました
メインとなるジャホンの物語の見応えは、これで一本映画ができるのに贅沢に消費するなぁ!という出来栄えです
ジャホン、母親の俳優さん、女優さんは終わってみれば「ああ、こう言う役割を本当に素晴らしく達成される方々だよなぁ」と言うお二方でした
出演者、一人として素晴らしいと思わない方はいないキャストで、もっと韓国映画に詳しかったら、あの見覚えのある方も、あの見覚えのある方もわかって、もっと楽しいだろうになぁと残念に思います

第2章は、6月28日金曜日公開です
もう前売券も購入済みで、ただワクワクして待っています
それまでにもう一度観に行けるといいのだけれど…
キネカ大森さんか目黒シネマさんで年末あたりに第1章第2章の二本立てを企画していただけないかなとも期待しています

 

公式サイトです↓

kamitotomoni.com

 

ネットの記事です↓