「彼らは生きていた」(イギリス・ニュージーランド 2018)を観ました

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第一次大戦、イギリスの年端もいかぬ若き志願兵の入隊、訓練、西部戦線投入から終戦までのドキュメンタリー映画

当時の映像をカラーリングし、退役軍人のインタビュー音声を経過に合わせ、編集したものです

 

もし、この場にいたら、こういう光景が目に映ったのだ

という映像が流れていきます

塹壕戦は視界が限られていることもあり、自分がすっぽり塹壕の中にいるかに思えました

一方で、インタビューの音声は当時を生々しく語りつつも、過去を振り返っている感慨がありました

眼前に繰り広げられる映像の臨場感と、リアルであり、かつメタでもある言葉に、それらが自分の過去でもあり現在でもあるかのような不思議な感覚が呼び起こされました

 

退役軍人の語ることは、それぞれどれも少しずつ、時々大きく異なっています

それは、当時の彼らの違いでもあり、現在(インタビュー収録時)までの人生の違いでもあるのでしょう

映画冒頭では第一次世界大戦への志願を総括して「良い経験だった」「代え難い体験だった」と語る人もいます

志願するときの高揚感、使命感、稀に社会的圧力、訓練の時の若者が軍人になる過程、戦地の劣悪な環境、死の恐怖、仲間との連帯感、休暇での出来事

当時の気持ちのままに語られる言葉は冒頭の総括とは必ずしも同じではないようですが、矛盾するものでもないのでしょう

 

心に残ったのは、彼らが敵兵ドイツ人を憎んでいないことです

彼らは大勢の仲間を失いながら、投降したドイツ兵のことは「同じ体験をした人間」「戦地にいなければ、普通の仕事や家族を持つ人間」と捉えていました

また、終戦後、故郷に帰ってからの市民との断絶を語る言葉も印象に残りました

彼らは最初から格差の中にあり、市民との乖離があったのでしょう

戦争から戻ってみると、それは断絶までに深く広くなっていました

今、もしも戦争になり、志願兵が募られたら、同じことが起きるのだろうと思います

 

ある階層が特殊な環境で他の人々と共有できない体験をする

結果、そのグループは社会に新しい階層を築く

社会的分断が新たな、強固な分断を再構築していくように思えました

 

今、戦争が起こり、退役軍人が生まれたら、彼らはどのような戦後を生きるのでしょう

今の世の中の方が特殊な環境で他の人々と共有できない体験をした人々は生きづらいだろうと思います

 

もう少しいろいろ考えたのですが、うまくまとまりませんでした

観て良かったです