また、個人的に思ったことなど
主人公はマチュなんですけど、私にはシャアとジオンというか、あの世界の行く末のお話でした
もう一つの世界では失敗した人々の話です
いわゆる失敗した人々のリベンジ物では、彼らには挽回や復讐や逆襲をする対象があるのですが、このお話にはそれはありません
だって、記憶が(ふわっとか、ピピっとかはあるけれど)ないのですから
その時々に、「どうしようかな」と考えながら生きています
ファースト以降のガンダムでは、シャアは随分あれこれしてしまったようですが、この世界のシャアはその道は選びませんでした
その選択をもたらしたのは、シャリア・ブルでした
ファーストでは亡くなっていたシャリア・ブルは、この世界では生きていました
生きていて、考えていて、選択して、決断して、その彼との対話がシャアの未来を変えました
確かに、ニュータイプの彼には見えたいくつもの未来が、彼にシャアの危うさを伝えたのかもしれません
けれど、相当前から水面下で動いていたことから、あのゼクノヴァで見えた未来が彼に決断させたのではなく、彼が生きてきた時間と思考が彼に決断をもたらしたのだと思います
どれほどの偉人であっても、亡くなった後に変化や進化をすることはできません
生きているから変わっていける、生きているから対話ができる、誰かに変化をもたらすことができる
一人の人間が八年間生きていたことで、一人の人間の選択が変わり、もしかしたら世界の未来も変わったのだとしたら、このお話の中で「こっちでは生きていた」何人ものキャラクターは、「生きていることの意味を考えよ」と伝えていたのかもしれないなと思いました
一方で、ファーストではいくつもの命が失われるたびにいくつもの道が失われていたのだなと思います
おしまい