「落下の王国」ネタバレ感想

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観てきました

1915年のロサンゼルスの病院に、二人の人物が入院しています
一人は、スタントマンのロイ
失恋に自暴自棄になった彼は自殺行為に等しい無謀なスタントを試み、骨折
一人は、アレクサンドリア
幼くも農園に働く母を手伝い、オレンジの収穫中に梯子から落ちて骨折
アレクサンドリアの慕う看護師への手紙がロイの元に届いたことから、二人の交流が始まります
それはベッドから動くことのできないロイをアレクサンドリアが訪ね、ロイの語る叙事詩に耳を傾けることでした

利発で時に生意気、無邪気で素直なアレクサンドリアとロイのやりとりは微笑ましく、思わず吹き出す場面もあるのですが、ロイには隠された魂胆がありました
それは、アレクサンドリアを騙して動けない自分に代わり自殺のための薬を持ってこさせることでした
しかし、アレクサンドリアが持ってきた薬は偽薬で、自殺の叶わなかったロイは絶望し激昂
その姿を見たアレキサンドリアは、ロイのために薬品棚の梯子を上り、再び転落するのです

治療を終え、目を覚ましたアレクサンドリアの傍には、泣いて詫びるロイがいました
彼はアレクサンドリアに彼女を騙していたことを伝えます
それでも、アレクサンドリアはロイに叙事詩をねだり、ロイは語り始めるのですが、その物語の中では次々と人が死んでいきました
自分は嘘つきで弱いというロイにアレキサンドリアは、「殺さないで。これは私たちの物語よ」と訴えます

ロイの語る叙事詩の主人公はロイでした
弟を殺された復讐を誓い、仲間と共に仇を討つために宿敵を追い詰めます
ロイの自殺は絶望からの逃避ではなく、復讐だったのです
けれど、アレクサンドリアにとっての物語は違いました

おそらく被差別民であったアレクサンドリアは、「怒れる人々」に自分の馬を奪われ、家を焼かれ、父を殺され、母と妹か弟とアメリカに渡ってきました
母を助けて農園で働き、家族でただ一人英語を覚え、医師と母の間で通訳もする利発な子供で、母が困るような医師の言葉は伝えない賢い子供です
そして、ギプスの左手に宝物の入った箱を片時も離さず、恐怖にお漏らしをし、右手の指をしゃぶり、真夜中には看護師に抱っこされて眠る、5歳の子供です
彼女の物語は、父に再会し、父に抱き上げられ、生えてきた前歯を褒めてもらうこと、父と旅をし、父の命を救う物語でした

君に捧げる、世界にたったひとつの作り話。
この圧倒的な映像、音楽、全てはアレクサンドリアのための物語だったのです

映画の終幕に、ロイの出演した映画が病院で上映されます
それは喜劇映画でした
やがて映画の物語を離れて、モノクロの無声映画のスタント場面が次々と展開します
粗い画像、コマ落ちの動き、雑音の中で役者はその身を躍動し、落ちて、転んで、落ちて、転んで、落ちて…
その姿に「映画が大好きです」という声が聴こえました
作品と、作品に関わるすべての人々の「映画が大好きです」という声が、確かに聴こえました

人を幸せにしたい
映画を愛している
素晴らしい作品でした