映画EXIT、観てきました

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面白かった!

導入部の主人公ヨンナムの身体能力の表現が彼の性格と置かれている状況をきっちり伝えていて、かつ、その後のバタバタした家族の描写で少し忘れかける仕組み、うまい

事件が起きてからの彼の「屋上へ!」が一度スルーされるところも、ヨンナムの状況判断の確かさを伝えている

事件の内容が内容なだけに残酷描写もある得るのだけれど、それがないだろうことが序盤で確信できるので、無用なストレスに晒されることがない

ウィジュの上司の顛末も「タワーリングインフェルノ」でどうしようもない上司を観ている観客には彼みたいな人が出てくるだけで十分だし、それを知らない観客にはくだくだしい人物描写は不要だし、いい塩梅だ

何より、ヨンナムが脱出に動き出して以降の話の運びがいい

観客に集中力や観察力を強いる壁登りや脱出計画のいろいろは前半、疲れてきたあたりで家族や子供達が描かれて、ヨンナムとウィジュの人となりと関わりが再確認できる

後半は走る!走る!走る!二人をただ追いかけて没入できるのが、心地よい緊張感と爽快感をもたらしてくれる

救出されてからの二人のやりとりも可愛いけれど、ラストの父親の息子にかけた「どうもありがとうございました」の台詞が何より素晴らしかった

よくわからなかったのが、クレーンにたどり着く直前のドローンの件

あのたくさんのドローンは見物ではなく、二人を助けるために集まったのだと思うのだけれど、どういうことだったのかなぁ?

空気は撹拌しちゃってるから、ガスを防いでいたとも思えないし

考えられるのは、二人に対し壁を作って見せて「進むべきはこちらではない」と知らせていたということか

それで、振り返ると一機だけ待っている

多数と一機の対比で、一機の方が重要であると(情報を持っていると)知らせる意図があったのだろうか

ドローンを使ったテレビに留まらない個人のインターネット中継については、これまで日本を襲った自然災害と、当時、中継されながら、その後一度も公開されない映像をいくつか観た記憶から、必ずしも是認はできない

応援している配信者の描写からも、助けてあげなきゃという言葉と本人の実感の間に大きな隔たりがあることが見えたと思う(*追記)

ラストにマスメディアが殺到しない辺り、この作品の品の良さというか、公、個人を問わず報道に対して一線を引いている姿勢を感じた

恐ろしい数の死傷者が出ただろう事件の内容を思うと、スタッフロールのコミカルな演出には少し違和感を覚えるけれど、作りたいのはこういう映画だったんだろうなぁと思うので、そこに文句は言えないなぁ

 

追記

監督の「どんな人間にも少なくともひとつは重要なスキルがあり、目立たなくても、人生のなかでそのスキルが必要な時がくれば、おもしろいことになる」と言う言葉を思い出した

YouTuberもドローンを飛ばした人も、みんな“少なくともひとつは重要なスキルを持つ人間”だったのだなぁ

YouTuberの描写に「なんでチキン?」「なんで厚化粧?」と思ったけれど、それは彼ら、彼女らの日常の描写であって、その日常にスキルを生かすべき瞬間が到来したと言うことだったのだろう

ヨンナムは主人公だけれど、映画の中にはヒーローはいっぱいいたんだな