澤好摩「光源」を読む 五

ご厚意により、澤好摩句集「光源」を読む機会に恵まれました
読み進め、考えるために文章にしようと思います

かたくりの花の畢りを雨にかな

の、の、を、に、の助詞の流れが心地よく、にかなの余韻に惹かれた句です
隠されている主語と省略された動詞をどう想像するかを考えました
二つの「の」を両方とも連体修飾と考えると、詠まれてはいない主語、人がいることになります
省略された動詞は、この流れで自然なものと考えると、見る、眺める
訪ねるもあるかもしれません
人の視点を設定すると、かたくりの花は群れ咲き、そこの雨の降る光景は高さ広さ奥行きを持ったものになります
人はこの景に畢りを見ており、それは人がかたくりに心を添わせているからだと思います
もう一つ、音読の調べから感じる主語は「かたくり」です
かたくりのを主格の「の」と読みます
かたくりは、その花の畢りを雨に
そして動詞を補います
迎える、打たれる、さまざまな動詞を詠むことが可能です
ここでは花一輪の畢りをつぶさに見ることができます
花びらに蕊に色に畢りが見えるのです

言葉運び、調べで感じたことと、構成に思ったことがあります
花の畢りは時間の終わりです
かたくりの花の畢りと連なる言葉は、そのまま時間の流れのようです
畢りが「を」で向かったものは「雨」「に」でした
この「に」は場所を示していると思います
時間の流れと空間が一点で交差する、それが畢りであり、雨である
この「に」の着地を受け止めているのが「かな」なのだと思います