澤好摩「光源」を読む 六

ご厚意により、澤好摩句集「光源」を読む機会に恵まれました
読み進め、考えるために文章にしようと思います

岩床の上を水ゆく雪柳

表現に惹かれた句です
私は川底に露出した岩床が好きで、目にするたびに詠みたいなぁと思っています
板のように重なった岩が、剥がれたり、裂けたりして、それが島のようにも、背筋のようにも見え、そういったところどころに変わる水の流れを見ていると楽しいのです

この句では、上を水ゆくと表現されています
なめらかな言葉運びから、岩床はすっかり水に覆われているようでもあり、一方で「ゆく」という自立した表現に、その歩みがはっきりと見える幾筋かの流れかもしれないとも思います
そこに雪柳があります
この雪柳は切花で見る白く小さな花の咲き枝垂れる美しくたおやかな花ではなく、歳時記にある「渓谷の岩上などに自生する」雪柳です
そう思って読むと、咲き満ちる花の白さ、かぶさるように枝垂れる枝に、渓谷の巌と対峙する生命力が感じられました
岩床と雪柳の存在感の間に水はあります
雪柳の解像度の高さと、「ゆく」の自立性から、この水は岩床に流れを変え、分かれ、時に飛沫を上げる幾筋もの流れであると読むことにしました
この水の「ゆく」は明るさであり、軽さであり、読み手の心持ちに添うものになり得るでしょう