観てきました
開始即屍累々でした
塹壕戦、敵は目前、互いに銃は撃ち合う、手榴弾は投げ合う、火炎放射まで浴びせかけて、その中をかいくぐるわけでもなく突撃
勝利しても喜びはない悲惨な地上戦です
日本軍との戦闘だったのですが、どちらがどちらか見分けがつかないのです
時折聞こえる日本語に「あ、今、映っているのが日本軍(日本兵)か」と思うくらい
そこで感じたものは、その後の国共内戦の描写で明確になります
「同じ民族で争うなんて」という台詞があるのですが、それは「同じ人間で」という意味で、映画の最初から提示されていた気がしました
内戦は共産党率いる中国工農紅軍が優勢、ドラマの主役の一人である雷将軍、通信隊長佟の国民革命軍の連隊は補給もないまま雪の戦線に留めおかれ、兵は飢えに苦しんでいました
すぐ近くに中国工農紅軍が駐留している戦場で、佟は部下と二人、偵察のために森に入ります
そこで敵兵と出くわし、銃を突きつけ合う状況に陥るのですが、ちょうど手に入れていた野うさぎを三人で分け合い、塩をふって食べるのです
実はこの偵察の前に、雷将軍以下士官が自分の馬を糧食に提供しており、佟と部下はこの時、飢えに苦しんではいませんでした
中国工農紅軍は転戦する先で農民の支持を得、食料に困ってはいません
この場面は「人は飢えていなければ、たとえその時相手を殺傷できる武器を手にしていたとしても、殺し合わずにいられる」と言っているように思いました
この戦線での戦いの終わり近く、佟の部下が中国工農紅軍に寝返ることになります
彼が変心した理由は、この時に出会った敵兵が彼の願いを聞き、実家に彼の元気なことを伝えてくれたこと、そして、そこで彼の家族が家を荒らされることも暴力に晒されることもなく安全に暮らしていると知ったことでした
彼の家族は貧しさゆえに長いこと虐げられてきたのです
その家族が大切にされていると知り、彼は寝返ることを決心したのでした
ここでも、約束を守ること、相手を大切にすることができれば、戦う必要はないと言っているように感じました
戦いは国民革命軍の敗北に終わります
日本との戦争で名を馳せたことで雷将軍とユンフェンは出会いました
互いに深く愛し合いますが、戦況の不穏を察した雷将軍は身重のユンフェンを台湾へ送り出し、自らは国共内戦の最前線へ身を投じます
雷将軍は愛する妻ユンフェンの存在こそが自分を支えてくれたと言い残して戦争に斃れますが、己の美学に殉じた彼は何を遺せたでしょうか
佟は配給を多くもらう目的でユイ・チェンと嘘の家族写真を撮りますが、ユイ・チェンの思いやりのある言葉に心密かに再会を期し、それを支えに戦い、敗戦後は雷将軍の手帳を彼の妻に届けることを最後の任務とし、台湾を目指します
ユイ・チェンは結婚の約束をした幼馴染を探し、女性一人で苦しい生活を続けていました
幼馴染が負傷兵として台湾へ送られたのではないかと聞き、台湾へ向かいます
巌は兄に代わり日本軍に徴発され、やっと帰国した台湾では敵性思想の持ち主とされ警察の監視を受けます
実家では密かに心通じていた日本人女性からの手紙を母親に燃やされており、日本に帰国した彼女のその後を知るすべもありません
その彼女の手帳を偶然手にしたユンフェンは巌と出会い、台湾への船上で佟とユイ・チェンは再会し…第二章へ続きます
第一章については戦場の事ばかり書きましたが、戦争と戦争の産む苦しみが第一章だったように思います
第二章でも言及されますが、20世紀は戦争の時代でした
今の戦争のない(と言い切るには問題があるかもしれませんが、国権の発動たる戦争はない状態)数十年を奇跡と言って終えてしまってはいけない、そこに何があるのか考えなければという思いが、この作品を作る力になったのではないかと思います
雷将軍と妻ユンフェンの恋はひたすらロマンティックに
佟とユイ・チェンの出会いはほのぼのと
幼馴染を探すユイ・チェンの姿は痛ましいほどに一途
巌と雅子(日本人の恋人)のエピソードは切なく
どこも過剰なほどにドラマティックなのですが、そこここに冷徹なリアリティがあって、それらの全てがあの戦争の時代にあるのだということが重たく、激動の2時間でした
第二章の感想へ続きます